[Art]変わりゆくブルックリンで異彩を放つ屋外ギャラリー「The Bushwick Collective」

img_7397-1-copy

The Bushwick Collective Photo Gallery フォトギャラリー

20世紀後半以降のニューヨークは、ある意味アーティストの後を追いかけてきた街です。

例えばソーホーは今はブランドのブティックが並ぶファッションの街、
でも20年くらい前はアートの街でした。50年前くらいに、廃墟だった工場街に貧しいなアーティストが勝手に住み始め、“ロフト”というコンセプトも生まれました。
だんだん素敵な街になって、住みたい人が増えて、家賃がどんどん上り、
アーティストは住めなくなったので、今度はブルックリンに移り住んだら、またそこが素敵な街になり・・・というのを繰り返しています。

今日紹介するブルックリンのブッシュウィックという街は、まさにその最先端を行っているエリアです。

地下鉄でマンハッタンから20分、ジェファーソン・ストリートという駅で下車。
このあたりつい20年くらい前には貧困とドラッグが蔓延するエリアでした。
駅前は今もお世辞にも綺麗とは言えない倉庫街、隣は雑草の生えた駐車場・・・

でも10メートルも歩かないうちに、建物の壁いっぱいに描かれたカラフルな巨大アートが
目に飛び込んできます。

右も左も建物の壁という壁、全部がアート。ストリート・グラフィティ風のものから、アニメ風、モダン・コンテンポラリーアート風。倉庫のシャッターにも、営業中のカフェの壁にも・・
正確な数はわかりませんが大小入れると100位あるかも。

img_7409-1

もちろん、このアウトドア・ギャラリー、The Bushwick Collective
偶然できたものではありません。
でも企業や自治体が計画して作ったものではありません。
始めたのは個人、地元で生まれ育ったジョセフJoseph Ficaloraさんの発案で、
世界中の有名なストリート・アーティストが描いているんです。

30代後半のジョセフさんは20世紀前半にイタリアからやってきた移民二世
彼が育った80〜90年代のブッシュウィックは貧困とドラッグが蔓延し、
お父さんはジョセフさんが幼い頃、自宅近くの路上で強盗に襲われて亡くなったと言います。

2000年代以降少しずつ再開発が始まり、だんだん安全になってきましたが、
外から移り住む人が増え、街の姿も変わり始めました。
ジョセフさんのお母さんが病気で亡くなったのはそんな頃です。

ジョセフさんはお母さんの思い出と共に、変わろうとしているこの街に何かを残したかった、と言います。

そこで思いついた素晴らしいアイデアがこれ、
「街の壁という壁に、世界中のストリートアーティストに絵を描いてもらおう!」

img_7403-1

ジョセフさんはアメリカはもちろん、南米やヨーロッパのアーティストにメールを送り、絵を描きに来てもらいたいと依頼しました。同時に近所の工場や倉庫のオーナーに、壁を無料で提供して欲しいとリクエスト。かくして、書く方も壁を提供する方も全くお金が発生しないバーターが成立。2011年に始まったプロジェクトは「Bushwick Collective」という非営利団体となり、アートもどんどん増えていきました。

このアウトドアギャラリー、徐々に知られるようになり、
今では週末になると、常に数十人の若者やツーリストが訪れて写真を撮っています。

img_7446-1

そしてアートがあるエリアにはここ数年の間におしゃれなレストランやカフェもどんどん増えてきています。街の雰囲気が良くなり安全になると同時に、マンハッタンから人がどんどん移り住んできて、家賃も上がっています。

そこでちょっと困ったことが起きている・・・というのを題材にしたドキュメンタリー映画が先月公開されました。
こうしたストリートアートのコンセプトを真似た、広告アートが今ニューヨークにはどんどん増えています。そんな業者がここの壁に広告効果がある! と気づいたというのです。

(ドキュメンタリー映画「No Free Walls | Street Art & Gentrification Collide in Bushwick」予告編 です。フルバージョンはComplex Newsで見ることができます。)

映画の中ではジョセフさんが「ある建物のオーナーが無料で提供すると約束した壁を、広告会社にお金をもらって貸してしまった。」と怒っていましたが、

確かに見事な壁画の向こうに、やはり壁画ふうなのですが良く見るとココナッツウォーターの広告が。また、 壁画を潰す形でビールの看板が掲げられている場所も。

img_7402-1

女の子が手に持っているのはZICOというココナッツウォーター

img_7477-1

壁画の上に貼られたバドワイザーの広告

看板業者によっては、アートとの共生を提案しているところもあるそうなのですが、今後もっと開発が進めば、クイーンズにあった5 POINTZの素晴らしい屋外アートのように姿を消してしまう運命なのでしょうか?

もしかすると本当に今だけしか見れない、たった今のニューヨーク、ブルックリンを象徴する屋外アートギャラリーなのかもしれません。もしニューヨークにくるチャンスがあったら是非見に行くことをお勧めします。

The Bushwick Collective Photo Gallery フォトギャラリー

img_7408-1

コメントを残す