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世の中というのは底辺から見る方がよくわかる、ありがたいことに私は有色人種で移民でハーレムという黒人居住区で黒人の家族と暮らしているので、今回の大統領選の構図がそうでない人よりも少しだけよく見えています。長いですが興味がある方は是非お読みください。
今回の大統領選は、アメリカが21世紀の未来を選ぶか、1950年の価値観に戻るのかの、まさに究極の選択だと思っています。
それを理解するにはまずトランプ候補の支持者がどんな人かを知る必要があります。ジャーナリスト津山恵子さんが取材した記事がとても参考になります。英語がわかる人はニューヨークタイムスのビデオと、コラムニストCharles B. Blowのコラムをお勧めします。
それらによればトランプ支持者は100%白人です。そして彼らが履く汚い怒りの言葉は全て、移民や有色人種に向けられています。壁を作れ、奴らをブッ殺せ、イスラム教徒を追いだせ、オバマ大統領に対するNワード。もちろんほとんどん人は黙っていますが、否定はしていません。これを見る限り、トランプ候補を含め支持者は全員「人種差別主義者」です。否定しない人も含めて。黙っていたら同意しているのと同じだからです。
ではなぜトランプ支持者は移民や外国人や有色人種に対して怒っているのでしょうか?
実は怒っているのではなく恐れているのです。
彼らの多く、高卒以下のブルーカラーの年収は下がり続けています。彼らはその理由を移民や有色人種や中国人に職を奪われたからと感じています。しかも世の中は女性の地位が向上し、同性婚が認められ、ものすごいスピードでグローバル化が進んでいる中で、彼らは時代の流れに置いていかれていると感じています。自分の土台がガラガラと音を立てて崩れていく恐怖はリアルなものです。
その恐怖を煽っているのがトランプ候補です。「強いアメリカを取り戻そう」という耳障りのいい言葉は、何もしなければますます悪くなるぞ、という脅しの裏返しです。
同時に、かつての白人至上の時代、製造業や組合が絶対的なパワーを持っていた時代、戦後景気の豊かさを白人男性だけが享受できた、公民権もない、女性の地位も低い、1950年代をチラつかせています。
対するヒラリーはある意味現実的です。社会の大きな潮流のその先を見ている。
女性への同等の報酬だったり、ゲイも含め性別、人種に関わらず公平な世の中であったり、
スローガンは「みんなで作るのが強いアメリカ=Strong Together」アメリカの今の流れです。
そして、社会階層や人種年齢含め広い範囲で支持されているヒラリーにも、どうしても届かない層があります。それが高卒以下の白人男性、つまりトランプ支持層なのです。これは世論調査でも明らかです。
一方ヒラリーがどうしても指示を得たい層があります。バーニー・サンダースの支持者、つまりミレニアルズ世代の若者です。民主党大会で彼らは、ヒラリーへの指名に抗議して一斉に席を立つなどして抵抗しました。彼らは数年前に大きくなった「オキュパイ・ウォールストリート運動」の流れで、1%対99%というコンセプトを打ち出した人たちでもあります。つまりアメリカでは富裕層に支配されているというんだという、それまで誰もが薄々わかっていたことを、否定する形で世の中に突きつけ、それがそのままサンダースの政治レボリューションにつながりました。その多くは就職難、スチューデントローンの重圧に苦しむミレニアルズ世代の若者たちです。彼らは政財界の既得権益に抵抗しているので、ヒラリーもこうした権力の象徴として嫌っています。
こうしてみると、今回の選挙は「低学歴の白人貧困層」「高学歴の若者貧困層」という、これまでスポットの当たらなかった、猛スピードで未来に向かう社会の中で取り残されている層に初めてスポットが当たった、そしてその数が決して少なくないことがわかってきた。アメリカ人も見えていなかったアメリカという国が一体どうなっているのかを、みんなが知り始めるきっかけになったとも言えます。
話を戻すと、ヒラリーは民主党大会で、若者に絶対的に支持されるバーニー・サンダースの政策を受け入れ、より革新的な政策を打ち出しました。富裕層への課税を約束するなど、ともすればこれまでの支持を失いかねない方法をとったヒラリーは、ある意味若者にかけている、潔すぎるくらいの決断です。それでもヒラリーはアメリカの未来を担う若者に賭け、多くのアメリカ人がそれを同意することに賭けています。過去ではなく未来を信じているからです。
8月4日現在世論調査ではヒラリーが10%リードしています。
でもヒラリーは「トランプに比べて」支持を得ているというだけで、必ず勝てるという保証はありません。なぜなら時計の針は戻らなくても、振り子は戻る、バックラッシュです。8年間の黒人大統領の後でバックラッシュは必ず起こります。
そういう意味で今年の選挙戦こそアメリカ人が真剣に冷静にアメリカの未来を考えなければならない時なのです。
ヒラリーも彼女本人の政策とパーソナリティを、露悪なトランプの発信パワーに負けないくらいパワフルに打ち出していく必要があります。オーラという意味では弱く、不器用なのに潔すぎる彼女は、なかなか多くの人に共感されないという弱みがあるからです。
でも国民は選ばなければなりません。黙っていたら大勢に同意しますよ、どちらも構いませんよ、という意思表示になります。一票というのは実はとても重いのです。
そういう意味でアメリカ人にとっては本当に大変な選挙。
私の予想では、前回オバマに投票した女性、有色人種、若者らが、今回は「トランプだけは許せない」という思いでヒラリーに入れるのではないかと予測していますが、さてどうなるか。またアップデートしたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとう!
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