
Ocean Beach – Fire Island
マンハッタンは山手線の内側くらいの面積の「島」それを含むニューヨーク市南半分は大西洋に続く湾に面する長い海岸線。そんなニューヨークが直面しているのは、水害です。
前回は9月のアメリカ防災・防犯強化月間にちなんで、自然災害ではなくニューヨーカーが最も恐れるテロや銃乱射事件に対する防災意識のことをJFN Day By Dayで喋りましたが、これはその続き!
日本も台風シーズンですが、アメリカもハリケーンシーズンです。
特に今週末は夏休み最後の「レイバーデー・ウィークエンド」という3連休で、海で泳げるのもこの週末まで。なのにちょうどハリケーン・ハーマインが大西洋を北上中、波が荒くリップタイドと飛ばれる強い引き波が非常に危険ということで、ニューヨークのビーチも日曜日はクローズするそうです。がっかりしている子供、大人もたくさんいるはず。
でもニューヨークだけに限って言えば今回のハリケーンの影響もその程度。つい最近ルイジアナの大洪水のように、低気圧やハリケーンシーズンで大きな被害が出るアメリカ南部や、トルネードに立て続けに襲われる中西部に比べれば、自然災害がずっと少ないことも確か。地震もまず起こらない・・・震度1でも大ニュースになるくらいです。
<ニューヨークの弱み”水害”>
でも実はニューヨークも近い将来やって来るかもしれないある大きな災害に備えています。マンハッタンはご存知と思いますが、山手線の内側くらいの面積の「島」それを含むニューヨーク市南半分は大西洋に続く湾に面する長い海岸線。そんなニューヨークが直面しているのは、水害です。

Hurricane Sandy
実は4年前の2012年、ニューヨークには滅多に来ない巨大ハリケーンのサンディが上陸。その被害のほとんどが水害でした。ハリケーンの高潮に大潮が重なって、 想定を大きく超える4メートルもの高波が押し寄せました。水害に慣れていないニューヨーク沿岸部は地下鉄のトンネルなども水につかり、ニューヨークだけで71人が犠牲になっただけでなく10万世帯が被害を受けました。マンハッタンでは変電所が水につかったため広い範囲で停電。その中心にあった証券取引所も二日間休場、 交通もマヒして、アメリカが受けた経済的なダメージは500億ドルとも言われています。
そしてこのような水害が、今後はもっと頻繁にあるかもしれないと言われているんです。
理由は気候変動。その影響で、ニューヨークの潮位は21世紀の終わりには1.8メートルも上がると言われているのです。
<マンハッタンを水害から守る”ドライライン”経過>
そんな中で世界の経済の中心でもあるニューヨークを水害からどう守るのか? 実はとても壮大な計画があります。
その名も「ドライライン」

Photo: Courtesy City of New York
摩天楼が立ち並ぶマンハッタンの南半分の沿岸部をぐるっと囲んで、氾濫した水をせきとめる土手や壁を作り、そこには木や植物をたくさん植えて、普段は公園や多目的のパブリックスペースにとして使おうというもの。
日本も郊外に行けばこういうスペース珍しくないと思いますが、何しろ世界で一番地価が高い場所にこれを作ろうというのですから、太っ腹な計画です。しかしニューヨークはセントラルパークの例でもわかるように、近くに公園などがあるほど価値が上がるので、しっかり筋が通った計画なんです。逆に商魂たくましいとも言えますね。「ドライライン」は仮の名前みたいですが、大人気の公園「ハイライン」にあやかりたい!という気持ちが伝わってきます。
このドライライン、来年から建設がスタートすると発表されています。
<解決しない防災格差>
ここに一つ問題があります。マンハッタンはこれで水害に強い街になるかもしれませんが、実はサンディで最も大きな被害が出たのは、周辺の沿岸部、所得が低い人やお年寄り、有色人種が多く住む地域で、未だにサンディの被害から復旧できていない地域も残っています。でも80万人が住むと言われる広大な沿岸部を全て堤防で覆うのは不可能、さらに サンディ後に洪水リスク地域の指定が広がったために、家の持ち主には洪水保険への加入が義務付けられ保険料も上がるなど、既に庶民の生活を圧迫しています。貧富の差が「防災格差」を生み出している典型的な例になっています。
では果たして将来は沿岸部から内陸に街を移すべきなのか?これはアメリカの全ての沿岸部の問題でもあり、これからますます大きくなりそうです。

Ocean Beach – Fire Island